くどう・しゅういち   工藤 修一 (FCコラソン代表)


 「みなさん、こんばんわ。コラソン代表を務めている工藤と申します。 きょうはお呼びいただきまして本当にありがとうございます。

 まずご指導していただいたスタッフの方々のご苦労は本当に多大なものであることはものすごく想像できます。私も2年前に日立カップで中学生の子どもたちを 指導した経験があり、やはり選抜の子供たちを短期間でまとめなければいけない難しさ、これはすごい大変なことだと現場で感じました。

 私は神奈川の出身ではなくて、実際に神奈川県内で指導をするようになってから 13、4年くらいになります。私が本田拓也と出会ったのは、彼が4歳のときなのでかれこれ 14、5年前になると思います。そのときから彼はまったくスケールの違うタイプの選手でした。 私もそのときが指導者としてのスタートでしたから、とにかくビックリしまして、いつも『飛び級』させて上の代の子どもたちといっしょに試合に出ていたような状況でした。

 ところが彼が4年生や5年生になったあるとき、やっぱり『いっしょの学年のみんなとサッカーがやりたい』と言うようになった。そのころから仲間意識をすごく大切する子どもだったんですね。それだけでなく、彼にはやさしい、ちょっとこう気の弱いところもあるので、 『じゃぁいいよ』と言って、下の学年に降ろしてといいますか、本来の自分の学年でプレーをするようになりました。私どものクラブはジュニアユースまで指導していますので、 その後の5年間も彼は在籍していましたが、あのときはいま思い出してみても、まさに子どもたちに教えてもらうことが非常に多かった代でした。

 本田拓也が中3のときですから4年前の話になります。FCコラソンとしてはじめてのフットサルの全国大会出場を決めた関東大会。準決勝でヴェルディと対戦することになりまして、これに勝ったら全国大会に行けるという大切な試合でした。 そのときにすごく子供たちが監督の指示以上にどんどん、どんどん勝手に成長していく 様が見えまして、最後のところで私も投げてしまったというか、とにかく『ここから先はもう自分たちで階段を昇りなさい』という話をしました。 ここまではなんとか私もいろんな知恵を出してみた。でも、ここから先にすすむためには彼ら自身の力で乗り越えてもらうしかない判断したのです。結果的にはそのゲームに勝ち、全国大会に行けることになりました(最終成績は全国第4位)。

 一般的には、「いい指導者がいなれければ、いい選手は育たない」と言われていますが、 私の場合はその逆で『いい選手がいい指導者になるチャンスを与えてくれる』と思っています。そこはお互いに補完する関係だと思いますが、そういうことを小・中学生のときにたくさん教えてくれる子どもたちの代のなかに彼はいたんですね。

 実は、彼とは今でも連絡はとりあっているんですが、国体のいろいろな練習や合宿などに行っているときにこんな会話がありました。私が『調子はどうだ?』と聞いてみたところ『いやぁシンドイっすよ…』と彼はこたえたんですね。もちろん自分のチーム(桐光学園高)がそのとき調子がよかったこともあったんでしょうが、つづけて「国体はあんまり面白くない…」と(一瞬のざわめき、どよめき、そして全員爆笑)正直そんなことを言っていた時期もありました。ただ、そのなかでたくさんの試合経験を積むことによって、きっと自分なりの目標といいますか、みんなをまとめ上げる力をおそらく身につけたんだと思います。

 本田拓也にもあてはまることなんですが、やはり選手としてのカリスマというものをすごく身につけていると思うんですね。「想像的な指導者がいなければ、想像的な選手も育たない」と言われているなかで、 僕自身は想像的な選手に育てられた方だったと思いますが(笑)。指導者として見ていても、やっぱりカリスマのある選手は必ず生き残っていく、まわりの選手を引っ張っていくと思います。そういうものを彼にも期待していますし、ここにいる選手のみなさんにももっともっと輝いていってほしい。お父さんやお母さん方が一番ご苦労されていることはみなさんも十分に理解されていると思います。本当にごくろうさまでした。そして、おめでとうございました。」